敵かどうかの見分けがつきにくい異物、自分の体内で作られた変異細胞やがん細胞、自分の細胞の中に入り込んだ結核菌やリステリア菌などの細菌やウィルスは、判別が難しいため、あるいは構造が丈夫なため、液性免疫の抗体では処理できず、見分けられるように教育され活性化されたマクロファージやキラーT細胞が敵を殺します。この免疫の仕組みを細胞性免疫といいます。クロレラエキスは細胞性免疫力を高めて敵と戦うことがわかっています。その中でも、ウィルス感染に対するクロレラエキスの働き、細菌感染に対するクロレラエキスの働き、そして抗腫瘍に関するクロレラエキスの働きについてご紹介していきます。
大腸菌や肺炎桿菌、リステリア菌など性格の異なる細菌を利用して、これらの細菌に対する生体防御の作用をさまざまな局面で調べてきました。その一環として大腸菌に続き、リステリア菌に対してクロレラエキスが感染防御効果を示すかどうかを検討しました。
リステリア菌は人や動物に対して共通に伝染する人の細胞内に寄生する細菌で、敗血症、髄膜炎など致死率の高い感染菌の病原菌としても知られています。特に白血病などによって免疫機能が低下している人は、リステリア菌に日和見感染するケースが多いといわれています。
細胞性免疫力を確認する菌としては、結核菌とリステリア菌が知られていますが、結核菌は毒性が強いため、ここではリステリア菌を使って細胞性免疫力を確認しました。
リステリア菌排除能力の促進効果
Immunopharmacology and Immunotoxicology 16(2):191-202(1994)
【投与条件-1】
雌マウスにクロレラエキスを1日当たり20mgずつ10日間経口投与し、投与終了後の翌日にこのクロレラエキスを投与したマウス群と対照群にリステリア菌を腹腔内に感染させました。
対照群にリステリア菌を感染させると、マウスの80%が死亡し、生存率は20%でした。しかしクロレラエキスの経口投与群では50%のマウスが生存し、大幅に生存率を上昇させました(図1)。クロレラエキスの10日間の事前投与で生まれた免疫力によって、生体防御機能を上昇させたことを裏づけています。
この実験で、γδ型Tリンパ球がクロレラエキス投与群で明らかに高い数値を示しました(図2)。クロレラエキスを事前投与しておくことによって、このγδ型Tリンパ球が細胞性免疫の主力となって、感染後の生体防御作用を上昇させることがわかりました。
注)γδ型Tリンパ球は、粘膜上皮などの生体防御の最前線に位置し、病原体などの進入やがん細胞の発生を監視したり、免疫応答を調節する重要な役割を持っています。