敵かどうかの見分けがつきにくい異物、自分の体内で作られた変異細胞やがん細胞、自分の細胞の中に入り込んだ結核菌やリステリア菌などの細菌やウィルスは、判別が難しいため、あるいは構造が丈夫なため、液性免疫の抗体では処理できず、見分けられるように教育され活性化されたマクロファージやキラーT細胞が敵を殺します。この免疫の仕組みを細胞性免疫といいます。クロレラエキスは細胞性免疫力を高めて敵と戦うことがわかっています。その中でも、ウィルス感染に対するクロレラエキスの働き、細菌感染に対するクロレラエキスの働き、そして抗腫瘍に関するクロレラエキスの働きについてご紹介していきます。
清潔そうに見えても、私たちを取り巻く環境には、つねにウィルスが人の体内に侵入する機会をうかがっています。これらのウィルスに感染するとインフルエンザやヘルペスといった感染症を引き起します。このように体内に侵入してきたウィルス感染症に対するチクゴ株クロレラ及びクロレラエキスの防御効果について、過酷な条件下にある海上自衛隊員を対象にした試験とマウスを用いた実験で検討しました。
【クロレラによる昭和41年度練習艦隊隊員の体重ならびにかぜ罹患率の推移について】
1967年防衛衛生学会
体力や抵抗力が衰えたりすると、かぜの細菌に体内につけ入る隙を与えてしまいます。特に、寒暖差の激しい季節には細菌が活発化する傾向があります。かぜ感染に対するチクゴ株クロレラの効果試験に参加したのは、まさにこれらの悪条件下にある海上自衛隊員です。
海上自衛隊のオーストラリア方面への遠洋航海中にチクゴ株クロレラを服用し、かぜの抑制効果を調べる臨床実験を行ないました。航海のコースは図1に示すように寒暖の差が大きい赤道を超えて往復する95日間の長期日程。食事には鮮度の落ちた野菜が使われるなど、衛生学的条件はきわめて悪くなることが予想されました。
【投与条件】
試験は4艦を構成する計971名。2艦458名にチクゴ株クロレラの錠剤を1日2gずつ服用してもらい、もう2艦の513名は服用しないことにしました。年齢はいずれの艦も10-30代の成人男性。期間は昭和41年7月8日~10月11日までの全航程95日間としました。
過酷な条件の中で、かぜに感染した日別の延べ人数を比較してみました。チクゴ株クロレラを服用したグループでは571名。服用しなかったグループでは903名となりました(図2)。また感染比率では、服用しなかったグループ全員が航海中にかぜにかかりました。しかし服用グループでは71%に留まり、残りは健康な状態を維持しました。これはチクゴ株クロレラを服用したグループが、かぜの細菌に対して、抵抗力を増したことを意味しています。図中のマニラ~横須賀間で罹患者が多発しているのは、暑い地域から寒い地域に戻ったためと思われます。
さらに興味深い結果として、航海中ほとんど陽に当たることなく、船内ボイラーで過酷な仕事を強いられた機関科隊員の体重変化の比較について調べました。その体重の平均変化を見ると、クロレラ未服用グループは測定開始時から-1.3kg。服用したグループでは+1.7kg(図3)となりました。体力を消耗する過酷な労働下でも、服用グループはその体力を維持していたことがわかります。
クロレラエキスのウィルス感染に対する防御効果
Natural Immunity and Cell Growth Regulation9: 121-128(1990)
サイトメガトロウィルス(CMV)は一般的によく見られるヘルペスウィルスで、日本人の大多数は胎児や乳児のときに感染し、体内にウィルスを保有しているといわれ、免疫機能が低下して感染しやすい状態になると、潜伏していたサイトメガトロウィルスが活発になり、感染症を引き起すことが知られています。
このウィルス感染に対して、クロレラエキスを事前に投与しておくことにより、顕著な生存率の上昇が見られました(表1)。
また、サイトメガロウィルス感染後のNK活性や血清インターフェロンはクロレラエキス投与群で上昇していました。
一般的にウィルスに対する生体防御を制御するとして知られ、がん細胞の増殖を抑えるといわれるインターフェロンや、がん細胞を破壊するNK細胞(ナチュラルキラー細胞)を、クロレラエキスが活性化することによって、ウィルス感染症に対する感染抵抗性を高めることができたと推定されます。