自然界に存在する重金属の中でも特に毒性が高いメチル水銀は、工場排水や農薬に含まれており、それらが河川や海に流出して生物に蓄積されていきます。メチル水銀の食物連鎖はまずプランクトンに濃縮され、それを食べた小魚、そして大きな魚へと濃縮・蓄積されていきます。私たちの体内でも同じことが危惧されます。メチル水銀は脂肪に溶けやすく、吸収率が95%以上と非常に高く体内に濃縮され蓄積されます。さらに妊娠中の女性に蓄積した水銀は、胎児も吸収してしまいます。厚生労働省は平成15年、17年の2度にわたり、「水銀を含有する魚介類の摂取に関する注意事項」を公表し、魚介類の摂取による胎児への水銀の影響に関して、妊婦に注意を促しています。
今回の実験では、体内に残ったメチル水銀に対する、チクゴ株クロレラの体外への排泄促進効果と、チクゴ株クロレラ摂取による妊娠中の母体とお腹の赤ちゃん両方の体内の水銀レベルの変化に関して、マウスを使って検証しました。
クロレラがおかあさんと赤ちゃんを守る―お魚と水銀とチクゴ株―
The Journal of Toxicological Science,36(1)121-126(2011)、2009年日本栄養・食糧学会
【投与条件】
塩化メチル水銀(体重1kgに対して5mg)を経口投与した雌マウスに、基本飼料(クロレラ無添加)と、これにチクゴ株クロレラを5%と10%添加した飼料の3種類に分けて21日間飼育し、水銀レベルの分析を行ないました。
図1は、マウスの血液中の水銀濃度の変化を示したものです。チクゴ株クロレラを添加した飼料を摂取したマウスは、クロレラ非摂取のマウスよりも飼育7日以降に血中水銀濃度が顕著に低下しました。
また、投与開始から21日後に、体内の水銀濃度を調べたところ、主に水銀が蓄積しやすい肝臓や腎臓、脳でも水銀濃度が顕著に低くなっていました(図2)。
さらに排泄された糞や尿から水銀量を測定すると、チクゴ株クロレラを摂取したマウスの方から、より多くの水銀が検出されました。この結果から、チクゴ株クロレラの摂取によってマウスの体内から水銀の排泄が促進され、体内の水銀レベルが減少することが明らかになりました。
【投与条件】
雌マウスに2ppmの塩化メチル水銀液を飲み水として与えながら、基本飼料(クロレラ無添加)と、チクゴ株クロレラを添加した基本飼料を与えた群に分けて飼育を行ない、雄マウスとの交配を経て出産された胎児マウスの血液と脳、肝臓、腎臓の水銀濃度を分析しました。
その結果、チクゴ株クロレラ添加飼料を摂取した群から生まれた仔マウスの血中水銀濃度は、顕著に低いことが確認されました(図3)。さらに体内での水銀レベルについて調べたところ、蓄積しやすい肝臓と腎臓でもチクゴ株クロレラ添加飼料を摂取した群において水銀濃度が低いことが確認されました(図3)。これらの結果は、母体がチクゴ株クロレラを摂取することで、母体から胎児への水銀移行に対して抑制することが推察されました。
また、出産直後の母マウスを分析したところ、チクゴ株クロレラ添加飼料を摂取していた母体では、血液および脳で水銀レベルが顕著に低下していました(図4)。以上の結果から、母体が日常的にチクゴ株クロレラを摂取することで、新生児・母体ともに体内水銀レベルを減少させることが明らかになりました。